最近、ネットの言論とその希望について考えさせられる事件が2つあった。
ひとつは、『灰色のベンチから』というブログの管理人に対して、某悪質出版社の社員からの脅迫メールが送られた事件である。
もうひとつは、有名な若手女優の宮崎あおいさんが俳優の高岡蒼甫氏と電撃結婚された件である。
一見、無関係に思えるこの2つの件であるが、実は共通項がある。
どちらの件も、背後にはネット言論とその問題点、そして可能性と希望の問題が関わっているのだ。


ここしばらく、上海に長期出張している親戚に招かれて、しばらくあちらでご厄介になっていた。
あちらに居る時も、できるだけ自サイトと友好サイト、及び「AbEnd」等のチェックはするように心がけてはいたのだが……。見落としていたこと、チェックし切れてなかったことも結構多かった。
先日ようやく帰国したのだが、それまでにも私の関心を引き、驚かせた記事がいくつかあった。その中のうち、2つが以下の2つであった。
(1)ブログ『灰色のベンチから』管理人への脅迫メール
(2)女優・宮崎あおいさんと俳優・高岡蒼甫氏との電撃結婚 一見、何の脈略もないように見えるかもしれない2つの事件であるが、ここであえて取り上げたのには理由がある。
実はどちらの件も、背後にはネット言論の問題が関わっているのだ。 どういうことか。
まずは、(1)のブログ
『灰色のベンチから』に関する事件から解説しよう。
今回の事件を知ったのは、私がよく行く友好サイトの以下の記事を読んだからである。
『灰色のベンチから』のSOS
(『カナダde日本語』2007年6月14日記事)
http://minnie111.blog40.fc2.com/blog-entry-509.html その記事によると、『灰色のベンチから』というブログの管理人・KEN氏に、脅迫や中傷としか思えないようなメールが送られたというのだ。
しかも、ミリオン出版なる出版社の社員から送られたものだという。
読者の皆さんは気分を害されるかもしれないが、『灰色のベンチから』6月13日記事、
『対決!ミリオン出版』より、KEN氏に送られたそれらメールの読むに耐えないような腐れた内容を、以下に晒し……いや、紹介しよう。
まずはひとつめ。
君の文章レベル、どう見てもプロじゃないんだけど。
誤字脱字、日本語の言い回しの間違いだらけ。
文章の組み立ての基本ができていない。
知識も一般人の平均以下で誤認多数。
3流ライターとか名乗るのやめてくれ。
3流は君よりはるかに上。
だいたい物書きで飯が食えていないんだろ?
だったらプロじゃないんだよ。アマ。素人。
バイト程度。偉そうにライター名乗るなボケ。
この程度でライターかと、みんな迷惑だ。
この文章を読む限りでは、ブログ文の具体的にどの部分に「間違い」や「事実誤認」が全くわからない。
まあ、具体的な事実を示すこともせず、自分の気にくわない発言をする相手を感情的に罵倒するだけのアホは、ネット社会に時々出没するようだ。
こういう輩こそ「3流」どころか、まとまな人間とは思えないだが。
この種のアホタレなコメントを受けたことが、私にも何度かあった。
続いて2つ目。
君の文読んでると気分悪くなるんだけど。
ライターで喰えないやつがブログなんて書くなよ。
まじで死ねよ。 死ね。 死なないなら殺してやる。
会社員兼とか笑わせるよ。
この世界はおまえみたいに身分の低いのが
出入りできる所じゃないから。
わかった? ちゃんと死ねよ。
いやなら読まなければいいのだ。読ませるように強要しているのでなければ。
あるいは、反対意見を述べるなら最低限のマナーがあるだろうが。
私の方こそ、こんなメール分を読んでいて気分が悪くなった。
ちなみにこの私も、メール発信者の言う「ライターで喰えないやつ」、「会社員兼」、「身分の低いの」である。
つまり彼の言葉は、KEN氏にだけでなく、他に仕事を持ちながらネットで言論活動をしている全ての人(もちろん、この私も含む)に向けられた罵倒である。 3つ目。
おまえ本当懲りないな。 まだ死なないの?
おまえに良いこと教えてやるよ。
おれは大手の出版社に勤めてる。
おまえみたいなゴキブリをライターとして
生かすも殺すもおれのようなやつ次第なんだ。
どうだ?やっと自分の身分に気づいた?
メディアは情報を発信するし、支配できる。
おまえを生かすも殺すもおれ次第だってこと。
おまえが物書きで仕事が出来ないように手を回すわ。
嫌だったら早く死ねよ。 じゃあな。
このメールを書いたヤツもアホだな、と思う。
というか、ここまで言えば明らかな犯罪ではないか。
それよりもこの3つのメールには、「メディア・大手企業=支配する側」とか、「俺は支配する側でエラいから、弱者を踏みつけてもいい」などという傲慢さに満ちている。 さらに驚くべきことにその後、
「管理人KEN氏とミリオン出版とがやりとりしたメール全てが突然消えた」という事件が発生! 6月15日記事
『ミリオン狂想ワルツ』によれば、今回の脅迫メールの件はほとんどカタがついたようだ。
2007年6月12日の読売記事等によれば、
当時16歳の女子高校生のヌード映像が収録されたDVDを、ミリオン出版の月刊誌『GON!』(約6万部)の付録として製造した疑いで、「ミリオン出版」という会社と『GON!』の元編集長は、児童買春・児童ポルノ禁止法違反容疑(製造)で千葉地検に書類送致されたそうだ。
そしてKEN氏に脅迫メールを送りつけたミリオン社員のネット屑は、逮捕確定だという。 だが、まだ問題は多い。
一人の女の子の将来とその可能性が、一出版社のエゴのために潰されてしまった、という事実は残る。
そのくせに、「年齢確認を怠っていた。読者もそれを求めている」などと世の中をなめきったような弁解をしている。
その親会社・大洋グループは、
何に対して謝罪しているのかわからないようないい加減な弁明をする。
それなのにそいつらは、「メディア(=支配する側)」という理由だからだろうか、誰一人として(脅迫者も元編集長も)個人名は出ない。
何より問題なのは……
メディアに属する人間に、このような人を人とも思わない傲慢さと腐りきったエリート意識にとらわれた愚か者がいたという事実である。
そしておそらくこれは、ミリオン出版だけのことではないだろう、ということだ。現在も、特に大手のマスメディアには、このような連中がゴロゴロいて、「愚かな大衆なんぞ、我々の報道でどうにでもなるチョロいもんだよ」とか考えながら、情報操作や世世論誘導を企んでいるのだろう。
ただそれでも……今回私は、このことを喜びたい。
これは快挙だ!
薄汚れた傲慢さと腐れた選民意識に凝り固まった自称「支配する側」に、大した力も持たない「3流」とか、「ゴキブリ」、「身分の低いの」、「ライターで喰えないやつ」などと呼ばれていた力無き者たちの連帯が勝利したのだ。
ネットの希望と可能性を見せた事例が、またひとつ作られたのだ。
実を言うと私は、『灰色のベンチ』というブログがあるのは、以前から知っていた。
以前の記事のコメント欄にて、読者の一人である山澤氏が紹介してくださった、以下の記事からである。
ネット世論操作を行う闇勢力の存在を告白
(『るいネット』2007年4月28日投稿)
http://www.rui.jp/ruinet.html?i=200&c=600&t=6&k=0&m=150533ネットカフェの青年
(『灰色のベンチから』2007年4月7日記事)
http://futu-banzai.cocolog-nifty.com/blog/2007/04/post_e8f7.html そこには凄い内容が書かれていた。
不幸にしてまともな就職ができなかった人たちに、裏世界の仕事を斡旋している、という事実がある。しかもその中に、ネット上での世論・情報操作をさせる、というものがあった。そういう内容だ。
私も以前から、いわゆる「ネット支配」(ネット上での世論工作、及びそれに関わる人々などの問題)について弊サイトで取り上げてきたが……おそろしくなリアルで、生々しい実態が書かれていた。
これには私も、「やはりそうだったか!」と得心するとともに、驚いた。
だがその一方で私は、正直なところ疑念も抱いていたのだ。
「こんな都合良く、こちら側の情報や、そういう情報を与えてくれる人が現れるものだろうか?」
「この人はどうやって、こんな凄い情報を手に入れてきたのだろうか? というか、そもそも本当に信用できるのか?」
などなど。
『灰色のベンチから』が、開設されてからまだ間がなかったことも、私が疑いを抱く理由になった。
何故、私がそこまで疑り深いのかというと、
ネットで自分の気にくわない言論を潰す卑怯者の中には、「同志や賛同者を功名に装って、攻撃対象に近づく」という手口を使う者もいるからだ。
そういった者を迂闊に信用して、自サイトに居座らせてしまったり、個人情報やそれにつながる情報などを与えてしまったりすれば、あとで大変なことにだろうからだ。 これは決して、誇張や妄想ではない。
賛同者を装った悪質行為の常習者が、私と幣サイトの常連さんでもあるkaetzchenさんを騙していたという事件が、現実にあったのだ。
その時の詳細は、以下の過去記事に書いてある。
支援者や賛同者を装ったネットウヨなど悪質行為者の手口にご注意を!(3月4日記事の追記も兼ねて)
http://komichin.blog80.fc2.com/blog-entry-56.html そんなわけだから、自分と同じ考えを持つ人がこちらに近づいてきても、少し疑ってかかるように、しばらく様子を見るようしている。対応はしても、どこかで距離を置くように気をつけている。
だが、今回のことと、
『灰色のベンチから』さんのこれまでの記事を見せてもらったが、この人は「高い確率で信用していいのではないか?」と考えるに至った。
嘘や演技で書いているのとは思えないようなものを私は感じた。
特に以下の記事は、良い意味で私を驚嘆させた。
パイプスタンドの男
(『灰色のベンチから』2007年6月11日)
http://futu-banzai.cocolog-nifty.com/blog/2007/06/post_54ec.html 小泉・安倍政権と続いた市場原理主義の嘘っぱちと、それによって切り捨てられた人たちの現実をこれほどリアルかつ見事に書いた文章には、滅多にお目にかかれない。
いわゆる「格差社会」問題に少しでも関心を持つ人に、一人でも読んでいただきたい文章です。
今後は、本当に微力ながら
『灰色のベンチから』さんを応援させてもらうことにする。
とは言っても、「弊サイトで紹介する」「リンクに加える」「ランキングにクリックする」などといったことしか、私にはできないのだが。
また、今回の事件を紹介してくださった
『カナダde日本語』の美爾衣さんにも、この場にて感謝申し上げる。
……あ、しまった。
つい長くなりすぎて、「宮崎あおいさんの電撃結婚」について書きそびれてしまった。
また、私の計画性の無さと、文章をまとめる力の弱さが出てしまった。
読者の皆さんには申し訳ないが、これについては次回に取り上げるということで、ご容赦いただきたい。

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